キュレーションサイトとは、人為的に情報を選択、収集、整理することで新しい価値を提供するサイトを指します。特定テーマやジャンルに沿った内容となっており、まとめサイトとも呼ばれます。手軽に情報収集ができる一方で著作権侵害や情報の正確性に問題があると言われることがあります。
キュレーションサイトは、特定のテーマについて有益な情報をユーザーに定期的に配信しているWebサイトになります。人気を獲得すれば収益化もできることから、ビジネスに取り入れている企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、キュレーションサイトの成り立ち、背景、メリットや運営時の注意点についてご紹介します。
目次
キュレーションサイトは、「特定のテーマについてネット上の情報を収集し、整理したサイト」のことをいいます。多くの情報を選択して整理していることが、美術館や博物館などの企画テーマに合わせ展示物を選ぶ「キュレーター」に似ていることから、キュレーションサイトと名前がついています。一般的に「まとめサイト」とも呼ばれています。
1つのwebサイトに特定のテーマに通ずるあらゆる情報がまとまっているため、ユーザーはネット上から効率よく情報を得ることができます。そのため、一般的なサイトよりもアクセス数を獲得し収益を伸ばせる可能性が高く、webサイト運営者にとっても人気のジャンルといえます。
キュレーションサイトはどのような理由で増えていったのでしょうか。
ここからはキュレーションサイトの増えた背景・理由をご紹介します。
出典:総務省 情報通信政策研究所調査研究部
「我が国の情報流通量の計量と情報通信市場動向の分析に関する調査研究結果」
上記の図は、総務省情報通信政策研究所による「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果」(平成22年6月)を参考に作成したグラフです。
後段でご紹介する事例が起きる前にあたり、平成13年度から流通情報量が年々増加していても、消費情報量は一定であるということを表しています。
これにより、従来キーワードに含まれる情報をユーザー自身が選別していた状況が、キーワードに含まれる情報過多によりユーザー自身が選別する行為に手間や時間が発生していることが分かります。その結果、手間や時間といった情報を探すコストを短縮するために情報の選別を自身で行うのではなく、ある程度情報が整理されているものをユーザー側が求めるようになり、情報の質や傾向、一定のテーマの情報を集め整理したキュレーションサイトが登場していき、増えていったといえます。
こうしたキュレーションサイトの増加はユーザー側と運営側に変化をもたらしました。
・ユーザー側の変化
スマートフォンやタブレット型端末の普及により、老若男女問わずインターネットによる情報収集がより手軽なものになりました。従来のようにPCを使用して「部屋でじっくり調べる」というものから「行動の合間、片手間に」、つまり「時間があるときに、時間を作ってじっくり調べる」から「移動や行動の合間に素早く調べる」という情報スタイルの変化が分かります。スピーディな情報収集のスタイルに変化したことにより、短時間で自らの欲しい情報を調べるようになりました。
令和2年に発表された情報通信白書では、2019年のインターネット利用室(個人)が89.8%となっており、大半の方がインターネットを利用していることになります。また60代以上の利用率も大きく上昇していることから、ユーザーにとって検索して情報を探すことがいかに身近であることがわかるでしょう。
参考:総務省 令和2年版情報通信白書 インターネット利用状況
・運営者側の変化
ユーザーのインターネット利用率の上昇からキュレーションサイトはユーザーの人気を集めやすく、短期間で注目度とアクセス数を集められる可能性が高いといえます。
また、サイト単体で収益化を狙うことも可能であるため、少ない投資で大きなリターンを得られる可能性があり、参入する運営者も増えていきました。
インターネットは便利に情報を入手できる一方、それが正しい情報であるとは限らないという問題があります。
キュレーションサイトが注目されるなか、他サイトのコンテンツを無断転載するサイトや内容の薄いまとめサイトなども増加していきました。
ここからは、キュレーションサイトの問題について実際に起こった事例を紹介していきます。
事例1 DeNAのキュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」
2016年12月に大手医療・健康上系キュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」が著作権侵害にあたるコンテンツや医学的根拠のない誤ったコンテンツを配信していたことが判明し炎上しました。
また、WELQ(ウェルク)などのサイト記事執筆においては、他サイトからの登用を推奨しているマニュアルなどがあったことからも大きく問題視されるようになりました。
DeNAが運営する他のキュレーションサイトも、他のサイトからの無断転載画像や文章の登用などが多く掲載中止に追い込まれ、掲載中止となりました。
事例2 マイナビウーマン
マイナビウーマンは「働く女性の恋愛と幸せな人生のガイド」をテーマにマイナビが運営しており、こちらもWELQ(ウェルク)同様の問題が発生いたしました。
女性に関するヘルスケア関連の記事で、不適切ではない健康を害する可能性がある内容が含まれているなどネット上から指摘が相次ぎ、その結果マイナビは対象記事を削除。この記事以外にも不適切な内容を含む記事があることを発表し、「マイナビウーマン」と「マイナビウーマン子育て」は一部記事が非公開になりました。
2022年現在のマイナビウーマンは「働く女性に送る人生のガイド」というテーマに変更され、人生の選択肢を届けるサイトとして運営されています。
事例3 ヘルスケア大学
リッチメディア社運営による情報サイトであり、「5231名の医師が参画するヘルスケアの情報サイト」と打ち出し、医師をはじめとする専門家協力のもとに情報を発信していました。
しかし、これらにかかわった医師のほとんどに実態がなかったことや数百記事以上を削除または非公開にしていたことが調査で浮き彫りになったことで大きな批判を受けることとなりました。
さらに、「がん」や「ALS」という病気に関しても網羅的な内容の記事を大量に用意することでGoogleシステム対策を行い、検索上位に表示されるように仕組んでいたといわれています。
2017年9月に外部の有識者などにより「医療・健康情報の信頼性向上プロジェクト」を立ち上げ、改善を表明していたが、2019年9月30日をもってサイトを閉鎖しています。
3つの事例をみてわかるように問題視される共通点には以下のような点が挙げられます。
多くのキュレーションサイトでは情報をどこから得たのかがわからないようになっており、本来の執筆者からみると自分の書いた記事や画像を勝手に掲載されていると感じ、批判が続出します。
また、嘘や事実確認不足の内容を発信することによってユーザーに重大な被害を及ぼしかねません。特に、医療や健康といった身体にかかわる情報の場合、嘘の内容を信じたユーザーの生活や健康に影響を及ぼす可能性があります。その場合、単なる批判では済まなくなるでしょう。>
ユーザーにとってさまざまな情報が得られる便利なキュレーションサイトだからこそ、運営側は最新の注意を払って、コンテンツ発信しなければなりません。ユーザー側も、情報があふれる情報社会だからこそ「正しい情報と嘘の情報を選択できる心構え」が重要といえます。
キュレーションサイトの問題が起きた後、2017年12月に健康アップデートという医療や健康に関連する情報の精査を目的としたアップデートが日本国内のみに適応されました。このアップデートにより根拠のない情報を発信するコンテンツに関しては低い評価を受け、上位表示されることが少なくなり、信ぴょう性の高い情報を発信するコンテンツは上位表示されるようになったため、上記事例のような問題もかなり是正されてきています。
その後もGoogleアルゴリズムはさまざまなアップデートを行い、より高品質なコンテンツを上位表示させるよう変化を続けています。
ではどのように信頼できる情報を発信しているサイトかを見極めれば良いのでしょうか。
情報の信ぴょう性を見極める基準として以下が挙げられます。
情報の引用元などがサイト上にきちんと表示されている場合、引用元をたどることで情報の信ぴょう性を調べることが可能です。引用元の記載があるかどうかということを確認することも見極める基準の1つとなります。
そのほか、専門的な知識をもって書かれたもの、存在する専門家の知識を得た上で作成されたものなのか、他サイトからの情報コピー・引用しただけのものではない(オリジナルのコンテンツ)か、などを確認することで情報の正確性などもある程度判断できるようになるでしょう。
これらの基準はユーザーが情報の安全性を見極めるための基準ですが、同時にキュレーションサイトを健全に運営するための基準ともいえます。キュレーションサイトを運営する側も意識する必要があるでしょう。
キュレーションサイトは、ユーザーにとって手軽に情報収集ができるメリットがある一方、情報の正確性に欠けるというデメリットもあります。キュレーションサイトの運営では、ユーザーに届ける情報の正確性を担保することともに、著作権侵害などの法令違反を起こさないための対策も必要といえるでしょう。
ここでは、キュレーションサイトを運営する際の注意点をご紹介します。
キュレーションサイトのコンテンツ制作において切っても切り離せない「引用と転載」。どちらも他人の著作物を複製・コピーする行為に当たります。
基本的に、すべての著作物には著作権法で守られており、著作権者には複製権というものがあります。個人的使用といった「私的使用のための複製」など一部の例外を除き、他者が無断で複製することはできません。また、ブログやSNS、社内での使用は「私的使用」には当てはまりません。
他人の著作物を無断で複製・コピーする行為のことをいいます。
無断転載による他人の著作物の複製・コピーは違法行為に当たります。
よくあるSNSの例
例えば、Aが描いたイラストをSNSに掲載し、自身の作品としてフォローしている人に紹介しました。この場合、掲載されたイラストを保存したり、自身のスマートフォンのロック画面・PCデスクトップ画面などに使用したりすることは、無断転載にあたりません。
ただし、Aの掲載したイラストを自身のSNSに投稿したり、自身が作成したように他者に配布したりする行為は「私的使用」から逸脱してしまい、無断転載にあたります。
たとえ、自身が「好きな作品だから」「みんなに紹介したいから」と善意で行う目的であっても複製権の侵害にあたる可能性があります。
自身のブログやサイトにおいて、好きな作家の小説の一部を掲載したり、好きな楽曲の歌詞を掲載したりするケースも同様です。
著作権法上では、公表された著作物において他人の著作物であっても「引用」であれば使用できるとされています。
著作権法 第三十二条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
引用:e-Govポータル
公表されている著作物とは、著作物が発行されている、著作権者の許諾を得て上演、演奏、上映など公衆に提示されている状態や誰でもアクセスできるwebサイトに掲載されている状態などを指します。
ただし、プライベートな姿を盗撮した写真や友人間で記録のために撮影したもの(記念写真など)である場合は公表されている著作物とは言えない場合もあるため注意しましょう。
引用に該当するために以下5つのポイントに注意しましょう。(下図参照)
特にブログやSNSでは「引用元が明記されていること」といった点を忘れてしまいがちです。知らず知らずのうちに無断転載を行わないためにも注意が必要です。
YMTLとは、Your Money or Your Lifeの略で、将来の幸福や健康、金融など人々のお金や人生にまつわる情報のことを指します。Googleの品質評価ガイドラインに定められた項目の1つです。
YMYL領域に当てはまるジャンルは、ユーザーの生活に大きな影響を与えるため、その他の領域と比較して厳しい品質基準が設けられています。
上述で記載したように、過去YMYL領域においてユーザーにとって有用でない情報が上位に表示されていたことがあり、2017年にGoogleによって健康アップデートが行われています。
キュレーションサイトを運営する上でYMYL領域のジャンルを扱う場合は、上記の基準をもとに信頼性や正確性を担保した上でユーザーにとってわかりやすい情報を提供することが重要です。
YMYLに該当するジャンルを取り扱うサイトを運営している方、SEOを活用したいという方は以下のコラムも御覧ください。
関連コラム
キュレーションサイトでは扱うテーマや情報、コンセプトによっていくつかのスタイルがあります。人気のキュレーションサイトを例にそれぞれの特徴をみていきましょう。
恋愛からニュース、エンタメ、ビジネススキル、健康など幅広いテーマを扱っているサイトは、大量の記事があってもカテゴリ分けがきちんとされているため、ユーザーにとっても、クローラー(※)にとっても全体が見やすくなっています。豊富な記事と情報を的確にカテゴライズしてSEOに強いのが特徴といえます。
※クローラ…ページ間のリンクをたどり、サイトを自動的に検出してスキャンするプログラムの総称
キュレーションサイトURL
https://gunosy.com/
https://allabout.co.jp/
情報配信が速く常にフレッシュなトレンド感のある情報を得ることができるサイトは人気があるでしょう。特にトレンドに敏感な若年層のユーザーを想定したサイトは、流行りのファッションやメイクなどの情報が速いほか、影響力のある女優やタレント、インフルエンサーが自らファッションやライフスタイルを提案するコンテンツを掲載している特徴があります。コンテンツ内で記載された商品のオンラインショップへのリンクが張られているキュレーションサイトもあるでしょう。
人気のキュレーションサイト
https://antenna.jp/
https://trilltrill.jp/
https://4meee.com/
その他、料理やメイク、車などある一定のテーマに特化した専門性の高いキュレーションサイトも人気といえます。特に2020年以降は生活様式がガラリと変わり、おうち需要が高まりました。気軽に食事や旅行にいけない分、グルメやスイーツなどのお取り寄せサイトなどを活用している方も多くなったのではないでしょうか。
今回はキュレーションサイトについてご紹介しました。キュレーションサイトは、ユーザーにとってさまざまな情報を短時間で得ることができ、非常に便利です。しかしその反面、情報があふれる現代社会だからこそ情報の取り扱いはきちんと行わなければなりません。
また引用や転載の範囲に関してはユーザー、運営者側どちらにも当てはまる事項といえるでしょう。
キュレーションサイトの運営者は今回ご紹介した事項を踏まえて、「ユーザーに有益な情報を発信する」ことを念頭に運営を心掛けいきましょう。
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