マーケティングの世界で「カスタマージャーニー」という言葉をしばしば耳にすることがあるかと思います。カスタマージャーニーとは直訳すると「消費者の旅」を意味しており、消費者が自社の商品・サービスを認知する前から認知した後に購買・アクションへと至るまでの一連の体験のことをいいます。
そして、カスタマージャーニーを図解でわかりやすくしたものを「カスタマージャーニーマップ」といい、自社の商品・サービスを狙ったターゲットユーザーの購買プロセスに合わせて的確に訴求するためには欠かせません。
今回はカスタマージャーニーマップについて、作成する目的や無料で使えるテンプレート、作り方まで詳しくご紹介します。
目次
カスタマージャーニーマップとは、顧客と企業のやり取りをストーリーにした図表のことを言います。カスタマージャーニーマップは、潜在的な顧客のニーズや懸念事項を洗い出したうえで、施策の立案を行い、顧客体験を向上させます。
カスタマージャーニーマップには、円形で表現したホイール型や特定の空間内を立体的に表したスペース型など様々なタイプがありますが、一般的によく使われるのは上記のようなタイムライン型のものです。消費者の行動フェーズを列に並べ、フェーズごとの顧客行動や思考、それに沿ったプロモーション法を行で表現します。同じタイムライン型でも列や行の項目は自社に合わせてカスタマイズする場合が多く、絶対的なものはありません。
あらゆるタッチポイントにおいて消費者との最適なコミュニケーションを考えるカスタマージャーニーマップに対して、ユーザーストーリーマップとは、消費者の行動に沿って商品・サービスが必要とする価値や機能、開発要件、開発の優先順位を整理するために使用されます。
顧客行動を時系列に並べてマッピングするという点ではどちらも同じですが、カスタマージャーニーマップはマーケティングの分野で活用され、ユーザーストーリーマップは商品企画・開発のシーンで用いられることが一般的です。
カスタマージャーニーマップを作成する主な目的は、大きく以下4つに分けられます。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
一つ目は、消費者の行動フェーズにあわせた最適な顧客接点の持ち方を把握する目的です。まだ情報収集段階の消費者に対して購入を進めても、かえって離れてしまいますし、購入を迷っている消費者に客観性を無視した一方的なPRコンテンツを訴求しても、おそらく刺さらないでしょう。顧客行動を可視化することで、こういった企業と消費者間のコミュニケーションギャップを防ぐことができます。
顧客行動を考える際に重要なのは、消費者起点で考えるということです。もし企業側の立場にとらわれ、自社に都合のいいように解釈してしまうと、プロダクト開発からプロモーションに至るまですべてが一方的で無意味なものになってしまいます。
企業側が売りたいものを売るのではなく、消費者が企業に求めているものを売ることがマーケティングの本質ともいえるため、消費者起点で顧客行動を理解する意識は忘れないようにしましょう。
顧客行動の理解だけでは消費者がなぜそのような行動に至ったのか、何をどう改善していけばよいのかが分かりません。顧客が特定の行動を起こした動機もあわせて理解しておくことで、より正確な顧客行動をイメージでき、課題の発見や態度変容を促す施策も考えやすくなります。
カスタマージャーニーマップは、ステークホルダーとのコンセンサスにも効果を発揮します。自社のWeb担当やマーケティング担当、企画・宣伝担当、システム担当、営業担当など社内関係者をはじめ、広告代理店や制作会社といった社外関係者も含めた全員が共通した顧客認識を持つことで、円滑なコミュニケーションが可能となり、立場ごとによる施策のブレを防げます。
カスタマージャーニーマップは消費者の購買行動プロセスを時系列で整理できるため、それぞれのフェーズを比較しやすく、課題の発見および優先順位をつけやすいのが特徴です。
売上に響く重要なタッチポイントはどこなのか、どのフェーズでフローが詰まっているのか、そのときのユーザーの感情はどんなもので、それを解消するために提供できるコンテンツは何かを一連の流れの中で把握し、どこを改善すればプラスへのインパクトが大きいかを判断できます。
カスタマージャーニーは対象とする自社の商品やサービス、Webサイトの形態によって多種多様であるため、それに伴ってカスタマージャーニーマップにも様々なパターンがあります。この章では、無料で使えるカスタマージャーニーマップのテンプレートをいくつかご紹介していきますが、必ずしもこのコラムを読んでくださっている方の会社に当てはまるとも限らないため、極力自社にあったテンプレートを探す、あるいはカスタマイズして利用するようにしましょう。
株式会社ヴァリューズはマーケティングに関わるデータ分析や市場調査、行動ログ分析ツールの提供を行っており、ナショナルクライアントを複数持つ実力ある会社です。テンプレートの形式としては比較的シンプルな構成になっているため、初めてカスタマージャーニーマップを作成する方でも取り組みやすいようになっています。会員登録は必要なく、簡単にダウンロードできます。
DESIGN αは名古屋のWeb戦略会社である株式会社リオが運営するサービスで、UI/UXリサーチとそれに基づくWebサイト制作、マーケティング戦略設計を得意にしています。DESIGN αの提供するカスタマージャーニーマップは、現状でのユーザー体験を落とし込めるAsIsタイプのものと、AsIsタイプから見えた課題を解決するために、あるべき理想のユーザー体験を設計するToBeタイプの2段階に分けているのが特徴です。ダウンロードするには会員登録が必要になります。
bizoceanはトライベック株式会社が運営するメディアで、マーケティングに関わらず、人事・経理・法務・営業などあらゆるビジネスフレームワークのテンプレートを提供しています。bizoceanのカスタマージャーニーマップは消費者の行動フェーズ(ステージ)がかなり細かく設定されており、顧客理解が詳細に行なえるのが特徴です。ダウンロードには会員登録が必要になります。
HubSpotはアメリカのマサチューセッツ州に本社を置くCRMプラットフォームの開発、販売を行なっている企業です。HubSpotが提供するカスタマージャーニーマップは7種類ものテンプレートがあり、各テンプレートの用途や作成手順、作成時の注意点までわかりやすく一つの資料にまとめられており、とてもボリューミーな内容になっています。会員登録は必要なく、簡単な個人情報を入力するだけでダウンロードできます。
本章で紹介してきたのは各社がサービスの一貫として提供しているものであり、ダウンロードする必要がありますが、単に「カスタマージャーニーマップ」で画像検索して探すのも効果的なので、ぜひ一度試してみてください。
カスタマージャーニーマップの作り方は、以下の8ステップで進めていきます。
ペルソナとは、商品・サービスを利用する典型的なユーザー像のことをいいます。似たような意味を持つ言葉に「ターゲット」がありますが、ターゲットは「20代~30代の男性」といった大まかな分類わけであるのに対し、ペルソナはより詳細にユーザー像を深堀りし、本当に実在するかのようなリアルな人物像を創ります。
カスタマージャーニーマップを作成する前にペルソナ設計を行わないと、どのような人物像を想定してマップを作成すればよいかわからず、顧客行動を考えられません。複数人でカスタマージャーニーマップを作るときには、各人の思い描く人物像が違い、意見がバラバラになる可能性もあります。
そのため、カスタマージャーニーマップを作る前に、まずペルソナ設計を行うことが必要です。
ペルソナ設計の詳細については、以下をご参考ください。
最終的に消費者に求めること、つまり、ゴールを明確にすることも重要です。お問い合わせや資料請求、会員登録、購入といったいくつかのゴールが考えられますが、消費者がそこに至るまでの経緯やアクションを起こすハードルは当然違います。そのため、何を目標にしたカスタマージャーニーマップを作成するのか、あらかじめ決めておきましょう。
ペルソナ設計とゴールの明確化ができたら、消費者の行動フェーズを設定します。顧客行動にはいくつかのフレームワークが存在し、AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)といった代表的なものから、DECAX(デキャックス)やULSAS(ウルサス)のような特定のシチュエーションに合わせて体系化されたものまで、あらゆる種類があります。
・AIDMA
・AISAS
・DECAX(コンテンツマーケティングに対応したフレームワーク)
・ULSSAS(SNSを活用した消費者行動フレームワーク)
自社の商材や特徴、利用するチャネル、実施するプロモーションによって顧客行動は変化するため、自社に合ったフェーズ設定を行いましょう。
縦軸も先述のフェーズ設定と同様に、企業の実態に合わせてカスタマイズするのが効果的です。考えるときは、マップを作って満足するだけで終わらないように課題や次回アクションを明確にできる構造にするとよいでしょう。例えば、上記では「課題」や「施策」を設定していますが、他にも「伝える価値」や「KPI」、「リスク」といった項目を付け加えるのも現状把握と今後の施策展開に活かせてよいかもしれません。
次のステップからは、自由に設定できる縦軸の中でも必須となる項目について解説します。
ステップ3で設定したフェーズに沿って、消費者がどのような行動をとるかを考えていきます。ここからのステップでは、付箋を用いて複数人でブレストしながら案を出していく方法が効果的です。あらゆる可能性を想定し、思いつく限り案を出してみましょう。
特にこのステップはカスタマージャーニーマップの肝であり、ここが不正確だと、その後の方向性もすべてブレてしまうため、じっくり時間をかけて進めて行く必要があります。よりリアルな顧客行動をイメージするために、ペルソナに近しいユーザー属性に対して、事前にアンケートやインタビューをしておくのもおすすめです。ディーエムソリューションズでは、コンテンツマーケティングサービスの一環として、消費者を対象としてアンケートやインタビューも受け付けております。
公式サイトやWeb広告、チラシ、テレビCMなど、自社と消費者をつなぐタッチポイントを明確にします。このとき、タッチポイントとチャネルをわけて考えるのも有効です。例えば、「公式サイト」をタッチポイントとして訴求する手段として、オーガニック検索や有料検索広告、SNS、メルマガなど、あらゆる方法が考えられます。できるだけ細分化しておくことで、今後のプロモーション方法が検討しやすくなるでしょう。
消費者が特定の行動を起こした理由はどのような思考から来るものなのか、そしてそれは正の感情なのか負の感情なのかを書き出します。
マッピングする際は簡単なアイコンや感情曲線があると、パッと見でわかりやすいためおすすめです。
これまでのステップから得られた考察をもとに、自社の課題やビジネスチャンスをあぶりだします。消費者が自社を選ばない理由は何か、次のフェーズへ導くためのコンテンツはあるのか、なければどのようなものを作る必要があるのか、もっとタッチポイントを増やせないか、といった様々な課題がでてくるはずです。そのような課題をもとに、今後力を入れて取り組んでいく施策を考えてみましょう。
課題がなかなか思いつかない場合は、ステップ8に至るまでの深堀りがきちんとできていない可能性があります。ステップ5の顧客行動の洗い出しに立ち戻って再考してみましょう。
最後にカスタマージャーニーマップを作成する上での注意点について解説します。せっかくカスタマージャーニーマップを作ったのに効果を発揮しないまま無駄に終わってしまった、とならないように十分理解しておきましょう。
一人でカスタマージャーニーマップを作成すると、自身の実体験や価値観、発想だけが頼りとなるため、実際の消費者の動きとはかけ離れたものになる可能性が高く、自分では想像もしていなかった大きなビジネスチャンスを逃すことにつながります。
また、本来であれば消費者の目線に立って考えなければならないのに、企業側の都合がいいように顧客を態度変容させる内容になることも考えられます。
そのため、カスタマージャーニーマップを作るときは必ず複数人で作成し、個人の主観を排するようにしましょう。
カスタマージャーニーマップは本格的に取り組むとたくさんの時間を要し、十数分や1時間などで出来上がるものではありません。設定したペルソナが各タッチポイントにおいてどのような購買行動をとり、どのような思考・感情を抱くかをできるだけ細かくイメージできるようになるまで考える必要があります。
ただし、だらだらと作成を進めていても時間だけが過ぎていくばかりで、あまり生産的とは言えないでしょう。そのためカスタマージャーニーマップの作成に挑むときは、前章で取り上げた一つ一つのステップにどのぐらいの時間をかけるかをチーム内であらかじめ設定しておき、めりはりをもって取り掛かることが大切です。
カスタマージャーニーマップは一度作ればそれで終わりではありません。SNSの普及や技術革新、ウイルスの流行といった外的要因だけでなく、自社の商品・サービスの改訂や価格の見直しなどの内部要因によっても消費者の購買行動は大きく変化することが想定されます。このような変化に気づかず、いつまでも古いカスタマージャーニーマップを利用していると、間違った方向に施策が動き出し、機会損失につながります。そのため、消費者を取り巻く環境が変化していないかを常にキャッチアップして、それにあわせてカスタマージャーニーマップも定期的に見直していくことが重要です。
カスタマージャーニーマップは、いつ・どこで・だれに・どのような施策を打つべきかを明確にしてくれるコンパスのようなもので、マーケティング戦略において強力な武器になります。一方で、作り方を間違えてしまうと現実とは乖離したものになってしまい、作成に割いた時間や労力が無駄になるだけでなく、出来上がったものが正しいと信じて間違った方向に突き進んでしまう事態にもなりかねません。
ディーエムソリューションズはSEOコンサルティングサービスを提供しており、その一環としてカスタマージャーニーマップ作成のご依頼も受け付けています。初めて作成で不安に思う方は、ぜひ一度当社にお問い合わせください。
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