2014年10月、私達ディーエムソリューションズは「Web制作会社から見たコンテンツマーケティング」をテーマに、キノトロープ社・生田昌弘氏へインタビューを行いました。
日本のインターネット業界黎明期よりご活躍され、Web制作のデファクトスタンダードを築いてこられたキノトロープ社、そして生田氏。制作のプロは最近話題の「コンテンツマーケティング」をどのようにとらえ、そしてどのように取り入れているのか。
決してバズワードではない、本質的なコンテンツとは何か、ロングインタビューの中でその答えを語っていただきました。
目次
―私どもと生田さんとのお付き合いは、2年ほど前に当社のSEOサービスサイトのお仕事を依頼させて頂いたのがきっかけでした。
「そうですね」
―SEO業界もあれから2年でずいぶん変わってきまして、今はコンテンツマーケティングが重要になってきているように感じます。私どももSEOのコンサルティングを行う際にクライアント様から「コンテンツを作らなきゃいけない」、「コンテンツに力を入れたいんだけど……」というお話もたくさんいただくようになり、その中でWeb制作やCMSの話も多く出てきています。
20年以上Web制作をされていて、CMSもかなり古くから取り組まれている生田さんは、コンテンツにフォーカスが当たってきている今の状況にはどういった印象をお持ちですか?
「全体としてはものすごく嬉しいです。やっと来たか!という感じですね。古い話になりますが、97年位にWebサイトを作っていた頃、よく『Web制作をしている方に話を聞きに来ました』という取材があったんですが、僕はそれに違和感があったんです」
―違和感ですか?
「はい。当時僕はまだ紙媒体からWebに移って2年位で、やっていたことの多くは、もともとある紙の資料やカタログをWebにまとめたものだったんです。編集くらいはしたかもしれませんが、実際はHTMLを組んだり画像を作ったりという仕事です。それは、僕にとっては『制作』というカテゴリではなかったんですね。印刷のお手伝いをしましたというぐらいのカテゴリだったんです」
―ゼロからコンテンツを制作していたわけでないと?
「そうです。その企画を考えた人、テキストを書いた人、絵を描いた人、写真を撮った人、そうした人がコンテンツを作った人なんです。僕もカメラマンという、写真コンテンツを作る人間だったので、写真を撮り下ろして初めてコンテンツと言われると思っていました。
我々もWebに来て間もなかったので、まだコンテンツそのものを作る仕事の依頼は少なく、カタログを作るなどの細かい仕事をしていたのですが、やはりそこにはWebを作っているという気持ちはなかったです。ですので、そこをフォーカスされて『Web制作をしている方に話を聞きに来ました』と取材されても、やっぱり違うんじゃないかと感じていました」
―当時のWebが立ち上がってきた時期は、まだエンジニア人口も少なく、コンテンツそのものよりも持っている技術・テクノロジーにフォーカスが当てられてしまっていたということでしょうか?
「おっしゃる通りですね。今では考えられませんが、95、96年だとHTMLの解説書もほとんどなかった時代ですから。エンジニアでもインターネットにあまり興味がない人は全く知らなかったですし。HTMLが書ければ仕事になるレベルでした。98年くらいまでは僕もコーディングとかをしていましたよ」
―生田さんご自身がコーディングですか!Web業界に入られて、自ら学んでコーディングまでされていたというのは、理由があったんですか?
「僕は写真をやっていたので、写真を印刷にあげた時にどういった仕上がりになるのかを知っておくことは、カメラマンの常識として必要だったんです。僕にとって、コーディングやフォトショップなどでのグラフィック加工は印刷の一環だったので。
それに、自分が知っていないと指示も出せませんし『この写真をこういう風にしてほしい、このテキストをこういう風にしてほしい』という依頼もできないと思ったからです。当時は皆、やりたくないことは『できない』って返してきたんですよ(苦笑)。それにも腹が立って、自分でできれば『こうやればできるよ』と言い返せるというのもありましたね」
―できる方法を考えよう、と提案するためにも自分で覚える必要があったんですね。
「例えば、僕は紙媒体で写真をやっていた人間なので、どうしても重い画像を使いたいわけですよ。でも、当時の回線スピードではそれは難しい。でもそこで『できない、無理だ』で終わるのではなく、いろいろ調べて工夫していましたね。どうも当時のブラウザは色数が多いとダメらしいから、色数の少ない特殊なパレットを作ってドットで打つとか、jpgじゃなくてgifで保存するとか……。」
―すごいですね。
「そうした工夫を重ねた結果、当時97年ではありえないような、バック全面に車の写真がドーン!と入ったWeb制作が実現できたりしてね。そういう意味でも自分で知らなきゃいけないからやります、という姿勢で学んでいました」
―そうした経験が早い段階でのWeb制作やCMSにつながったんですね。
「先ほども言いましたが、僕にとっては文章を書いたり、写真を撮ったりっていうのがコンテンツだという認識がありました。当時からずっとそれを言っていて、おそらく他の会社よりも言い続けていたので、我々は早い段階から写真を撮らせてもらえたりとか、Web用にコンテンツを作らせてもらえたりとか、ずいぶんそういった仕事をやらせて頂けたんだと思います」
―他社より一歩先を行かれていたんですね。
「でも業界全体では、カタログを渡されて『何とかしてよ』みたいな仕事がまだまだ多くて。
僕はもともと紙の人間だから分かるんですが、紙のカタログってすごくよくできていて、あれは表現として削ぎ落とした結果の美しさなんですね。それをそのままWebに持って来ても、コンテンツ量・情報量が全く足りない。削ぎ落としたものだから、Web上ではチープに見えるんです。
当時、マルチメディアという言葉が騒がれ、コンテンツのマルチユース(使い回し)が流行りました。Webにとっては紙のカタログがマルチユースのベースだったわけですが、それだとやっぱり情報量が足りなくて使えないんです」
―私どもの会社にも紙媒体からWebに移ってきたデザイナーがいるのですが、全く同じことを言っていました。Webはある程度たくさんコンテンツ量を入れないと様にならない部分があり、そこが紙とWebの決定的な違いだと。
「その通りですね。どのお客様とお仕事させて頂く時でも、我々のやり方で理解されないところや揉めるところがあるんですが、それは書き割り・構成要素のところなんです。うちの構成要素はレイアウトじゃなくて、入るものが並べてあるものなんですよ」
―そうでしたね。私どもが依頼させて頂いた時もそうでした。
「大抵、お客様はそれをレイアウトだと思うから、『このレイアウトじゃダメだ!』というお話になります。
なぜ我々の会社がそういった構成要素を提示するのか。その理由は、レイアウトはコンテンツが揃っていないとやる意味がないと思っているからです。もちろん急ぎの場合は『完全先割り』といって、レイアウトにコンテンツをはめていくこともありますが、それは本当に特殊な例です。
実際にコンテンツをどうはめるかは、コンテンツ側で決めていくことが大切なんです。入る要素は先に決めておかないとコンテンツが選べないので、書き割りでは構成要素を決めます。でも入る要素の中身はまだ見えませんよね。その要素が全部集まってコンテンツが揃ったら、全部並べてそれを見ながらレイアウトしていくんです。そうすればきれいに収まりますよね。
紙媒体であれば、実際にテーブル上に原稿や写真を並べて、そうやってきれいにレイアウトしていくのが普通のことで、理解もしやすいと思うんですが、それがWebだと本当に理解されなくてお客様ともなかなか共有できないんです」
―確かに、Webの世界では普通はやらないですよね。以前拝見した御社のやり方と今のお話を重ね合わせると、すごく理解できます。
「我々の説明が足りないこともあるのですが、やはり紙媒体の経験のある人の方が少ないので、理解されにくい部分があります。Webの世界ではレイアウトを先に決めるのが一般的なやり方になってしまっている。だからどのお客様も書き割りをレイアウトだと思ってしまって『ダメだよ、これじゃ。生田さん中身考えてくれないの?』なんていわれることがものすごく多いんです」
―なるほど。
「CMSを始めるとそれがさらに重要な問題になります。今までの話は1ページの話ですから、仮に完全先割りでも何とかなるんですよ。でもCMSだと書き割りそのままをレイアウトとして流し込んだコンテンツが、他の場所でも使われますよね。つまり、別ページまで影響してしまう。
本来、コンテンツのタイトル・長さ・量などに合わせて『こっちに出す時はこのくらい』、『あっちに出す時はこのくらい』という風にデザインやレイアウトを変えないといけないのですが、お客様は先に全部レイアウトしてしまうんです。
でもそれって実をいうと、制作会社にとっては非常に楽な仕事ではあるんですよ」
―工程が決められていますもんね。
「そう。決め打ちができてしまう。
僕だけじゃなくて、紙の経験者は皆それに違和感があるはずです。でもなぜ皆それを言わないかというと、楽だからです。だって全部完全先割りでやるわけですから、デザインは簡単ですよね。それに合わせてコンテンツを流し込めばいいだけですから。
そして、紙の経験がなくてWebから入ってきた人には、それが当たり前になってしまっている」
―こういうと語弊があるかもしれませんが、紙の方がしっかりしている面がある気がします。Webは修正などが容易にできますが、紙はきちんと作らないと成果物として成立しないイメージがあります。
「『余白が語る』というのが紙にはありますが、Webにはないですからね。その分Webの方が、コンテンツをしっかり決めないと難しい面が強いです。
この例えが分かりやすいかと思うのですが、ポスターを作ってくれといわれた時に『どんなキャッチコピーや写真が来るか分からないけど、とにかくガツンと来るものを作ってほしい』といわれても無理ですよね?でも、Webのやり方ってそうなってしまっているんです」
―今CMSのお話も出ましたが、これからコンテンツにフォーカスが当たっていった時に、これまでのやり方では通用しない部分が出て来ると思います。そうなると、制作側だけでなく、広告主側、つまり発注側も悩む部分がたくさん出て来るかと思うのですが、その辺りについて生田さんはどうお考えでしょうか?
「もうすでに出てきていますね。今、ローコストでCMSが可能になり、やりたいという会社も増えてきている。CMSはワンツーワンマーケティング(One-to-One)も簡単にできるわけで、そうなると皆『ワンツーワンもやりたい!』というお話になります。実際、我々の会社に来る依頼内容のほとんどがワンツーワンのお話も出てきます」
―確かに魅力的ですよね。
「でも、いざワンツーワンをやるとなった時、最初に『御社のユーザーはこれくらいの数・層に分かれますよね』という話をするんですが、そもそもユーザーのセグメントを考えていらっしゃるお客様はすごく少ないんです。そうなると、ユーザーごとに対応するコンテンツを今まで考えたこともほとんどない。初めてのユーザー・2回目のユーザー・常連のユーザー、全部をそれまで1つのコンテンツで対応していたことになります。
そこで例えば『ユーザーごとに100通りに出し分けられますよ』といった瞬間、お客様の方は『これ100個書かなきゃいけないんですか?』と引いてしまって、結果『ワンツーワンは次回にしようかな……』と盛り上がりが消えてしまうことも多いんです」
―発注側も、従来のやり方・考え方から変わっていく必要がありそうですね。
「紙媒体を経験している人間は、まずユーザーを想像して『どんな人がどんな風に必要としているのか』を考えてやってきました。でも、Webは先ほど述べたようにエンジニアリングが優先されてきた側面もあるため、20年近く経ってもまだ『コンテンツマーケティング』という言葉を作って、紙では当たり前だったことを浸透させる必要があるんです。
コンテンツマーケティングって、要するに『制作』ですよね?わざわざそう言わなくても当たり前のことだよ、と言いたいですね。我々は制作会社ですよ、と」
―コンテンツマーケティングという言葉自体は新しいようでも、やってきた内容は昔から紙媒体ではずっと当たり前のことだったんですね。
「そうですね。お客様に価値を提供して対価をいただく行動は全てマーケティングだと思うのですが、その中でも広告というのはお客様とのきっかけ、リレーションを作る仕事だと思います。制作というのは、それのお手伝いです。リレーションを作るためには、例えば値引きなどのサービスもありますが、重要なのはコンテンツです。
広告主・発注側の価値をいかに伝えるかということは、ずっと紙媒体が始まってから制作者がやってきたことで、それを今ごろになっても言わなくちゃいけないのも何だかなぁという気持ちもありますが……。
でも、お客様もコンテンツがやりたい、ワンツーワンをやってユーザーごとに作らなきゃと思ってくれて、そのためにWebでもコストをかけるくれる時代にやっとなってきましたね」
―確かに、コンテンツにコストをかける会社は増えてきています。
「実は、もうコーディングしたり、HTMLを作ったり、画像を作ったりするのは、無料にしたいと思っているんです。僕がCMSに熱心なのは、そうした部分をかなりローコスト化できるからというのもあるんですよね。極端にいえば1万ページのサイトでも、5、6枚のテンプレートで済むのであれば、1枚ごとでコストを割れば100円や200円でできた計算になります。それをもっと安くしたい、その分Webを作るならコンテンツにお金をかけてほしいと思っているんです。
でも、今はページを作ることやCMSの構築に我々もお金をもらってしまっているので、お客様もコンテンツに回すコストがなくなる場合があります。だから今後はCMSを導入するコストを限りなくゼロに近づけて『制作にお金を使う=コンテンツを作るのにお金を使う』という時代にしなきゃいけない、と日々考えています」
―そうですね。今後は『コンテンツを自分たちで企画する・プランニングすることが組み込まれていて当たり前』というところまで行く可能性があるというのを、今のお話を聞いて感じました。クラウドソーシングなどもあり、確かに、相当ローコストになっていくとも思います。
20年間コンテンツ作りに取り組まれている生田さんたちのような方々がさらに進んでいかれるというのは非常に心強く、私どももそちらの方向に行かなくては、と強く感じますね。
「もう1つ、コンテンツに重きを置くべき大きな理由があります。
インターネットが成熟してきたことで、Web制作に限らずどんな業界でも高い質やノウハウだけでは他社に対しアドバンテージを得ることは非常に難しくなってきました。だから、制作だけでなくお客様・クライアント側もそうなんですが、商品やサービスの差別化ができずに値下げに走ってしまう、そんな状況になってきています。
その中で、値段をあまり下げないで価値を提供できるものって何だろうって考えたら、制作会社にとってはコンテンツを作ることなんです。お客様側にも『これは値下げせず定価で売りたい』という思いがありますよね。それを叶えるには、その商品やサービスのバックエンドを支える物語やソリューションだという話になるじゃないですか。そこを相談して、こういうコンテンツは御社にしかできませんよ、こんな企画ができますよ、と提案していくわけです」
―価格競争に陥らないためにも、より踏み込んだコンテンツの提案が必要なんですね。
「はっきり言って今Web制作は、サイトだけ作っていれば何とかなる時代ではありません。プロダクトやサービスまで踏み込んでお話をしていく必要が出てきています。コンテンツと言っていますが、目的がお客様の売上を上げることにあるならば、時にはサービスそのものの変更なども話に含まれます。それもコンテンツである、と」
―そこまでされていらっしゃるんですね!
「はい。ホテルサイトを例に挙げると、今はどんなにきれいなホテルサイトを作ってもそれだけでは売上は上がらないと思います。すでにサイト自体をきれいに見せたり、高品質で作ったりすることに関しては、完成されている場合がほとんどです。
では何を提案すればいいのか。そこで、プランやサービスですよね。コンテンツ自体が、今までのような付加情報・ブランディング・物語よりも、より商品やサービスに近いところに変わってくるわけです。
我々もよくホテルのお仕事をさせて頂くのですが、予算・日程・ターゲットユーザー・年間カレンダーなど、多くの要素をマトリクス化して足りない部分を探していきます。その中で抜けていると思われる要素を見つけ、プランとして作らせて頂いたり、お客様に相談して作って頂いたりしています」
―それを聞くと、ネット業界って本当に成熟して来たなと感じますね。
「乱暴な言い方をすれば、サイトリニューアルはしなくてもいいんじゃないか、という場合もあります。でもそうした場合も、コンテンツだけはしっかり変えていきましょう、プランやプロダクトで抜けているものや、売れなくてもいいから集客力のあるものを一緒に相談していきましょう、と提案しています。
ホテルの例でいえば、夜景のきれいなホテルに『ナイトウエディングプラン』があったとしますよね。そういった特徴あるプランって需要が少なく、あまり成果がなかったので切られてしまうような場合があるんです。でも、数字にはつながっていなくても、そのプランが実は初めの集客のキーになっていることも多いんです。
お客様と一緒にそうした細部まで相談して、サービスを変えていきましょうと提案する時代にならないといけないと思います。
皆がもっとコンテンツを作ろうと考える時代になったのは素晴らしいことです。でも、Web制作だけやっている会社は、それでは今後値段を下げていくしか道がありません。そうではなく、お客様と一緒にサービスそのものを変えていく、そうすることで利益を上げ、お客様やそのユーザーにハッピーになってもらう。そこまで提案・提供して、コンテンツマーケティングと言えるのかな、と思います」
―おっしゃる通りだと思います。そういう意味では、Web制作会社と広告会社の境界線がなくなってきていて、両方がそちらに向かっていかなければいけないと感じるのですが、いかがでしょうか?
「その点については、僕は危惧していることがありますね。
SEOの業者さんや広告会社の方はすごくコンテンツマーケティングのことを言ってくださるんです。でも、肝心のWeb制作者側はあまり言わないんですよ。なぜなら、まだ構築で食べられるから」
―その理由は大きいかもしれませんね。
「それがとても残念なんですよ。今、いろんな業界の方が『コンテンツだ!』と言ってくれている。Web制作にとってはすごく追い風でチャンスの時期なんです。でも、Web制作側は言わない。このままだと、Web制作はコンテンツを流れ作業的に入れるだけの仕事になってしまうのかなと不安すら感じますね。
今日のインタビューもそうですが『コンテンツをやらなくちゃ、商売をそっちに変えていくんだ』という話を、Web制作者以外からはものすごくたくさん聞きます。質問も積極的にしてくださいますし」
―そう言われると私どもも『コンテンツについて考えていらっしゃる生田さんだから』お話を伺っている部分が大きいですね。『ただWeb制作で有名な方だから』というだけではお話を伺う理由にならないと思います。
「この間Web制作者のセミナーに出席した時の話なんですが、僕の前に登壇した方がコンテンツの話をされていたんですけど、参加者はどうも皆ピンときていない感じだったんですよ。非常に良いお話で僕も感動したんですけど。
それで僕のセッションではCMSがテーマだったんですけど『制作ってコンテンツ作ることだよ!』ってずっと伝えていましたね。コンテンツの話ばっかりして、30分経ってもプレゼン資料1枚も使わなかったんですけど(笑)。
Web制作者側にもっともっとコンテンツへの意識がないといけないのに……と強く実感したセミナーでしたね」
―今後求められることで、その意識も変わっていくでしょうか?
「そうですね。必然的に求められますし、やらねばなりません」
「今後の話でいえば、CMSでメールも配信するようになると思うんですよ、ページのように。それで今、アプリにもHTMLを配信する試みを行っているんです」
―アプリにHTML、ですか?
「はい。キオスクモードのHTMLを呼び出すだけのアプリを作っておいて、一見アプリのように見えるんですが中ではSafariが動いているんですね。それを多言語端末として病院の館内で使うという実証実験を行っています。
外国の方が来る時に、そういう端末を1個渡して院内の案内が全てそれぞれの言語で見られるようなアプリを作りたいというお話をいただいたので、良い機会だなと思って。でも完全にアプリにするとアップデートなどが大変なので、HTML版のサイトをアプリでも読めるようにすれば、連動して同じコンテンツを見ることができてCMSで全て管理できる。そういう企画なんです」
―なるほど!完全にCMSがマーケティングのプラットフォームになっているということですね。
「その通りです。ベースのプラットフォームがCMSになっていて、コンテンツは全てそこにちゃんと揃っている。ページやメールっていう概念はもうそこにはなくて、ユーザーやシチュエーションごとに『Aさんにはこれ』、『Bさんにはあれ』という風にリクエストがあったものに対し、シームレスに最適化されたページを吐き出していくんです。
メールで見ることもあるだろうし、Webで見ることもあるだろうし、スマートフォンで見ることもあるだろうし。どこで見ていても途中から見られて……まあ、Huluみたいな感じですね」
―確かにイメージは近いですね。
「Huluを初めて見た時は感動しましたね。PCでも、スマホでも、テレビでも、どこで見ても見た所から始められるシームレス感は、イメージとしては非常に重要だと感じました。
WebサイトというのはPCだけのものじゃないですし『スマホに対応しましょう』なんていう小さな話でもないんです。全てのどんなデバイスが来ても、最適なテンプレートで提示できるプラットフォームを作ろうよ、という話になっていくと思います。
だからWeb制作の仕事はそのプラットフォームを作ることも1つありますし、我々自身もそれに適応できるようになりたいと考えています。そうなると、そこに入れるコンテンツやサービスが本当に重要になってくるわけです。
プランやサービスも、リアルではなくバーチャルなので、より細かく一人一人に合わせた自由度の高いものが可能になります。同時に機械で管理できるからトラブルも減りますしね」
―インターネット上だからこそ可能な細かさ、自由度ということでしょうか?
「そうです。我々はそれを『粒度』という言葉を使って考えているんですが、粒の細かさですよね、それをより小さくしていくことが大切だと思っています」
―『粒度』ですか。
「コンテンツそのものの粒度も大切ですし、サービスそのものの粒度も大切です。リアルのサービスって、人の手を使ってやるものだから限界があって、どうしても粒度は大きいですよね。それをバラして、組み合わせで変えられたりカスタマイズできたり、そうして細かく自由度を上げていくというバーチャルだからこそできる部分は増えてくると思います。そして、そういうものがユーザーにも喜ばれると思います」
―テクノロジーでカバーしていった先に、最後に残るのがコンテンツということですね。
「そうですね」
―ありがとうございます。Web制作側がこうなっていくというお話は大変よく分かったのですが、最後に、クライアント側がコンテンツマーケティングに取り組んでいく上で、今後留意すべき点があれば教えて頂けますでしょうか?
「紙の時代から、コンテンツを作るというのはものすごく大変で、クライアント側だけでできる仕事ではないと我々は考えています。それは僕たち制作者がやるからこそ、僕らの存在する意義がある。つまり、そこに価値があるんです。
僕はCMSの管理・運用はクライアント側がやればいいと思っています。プラットフォームですから、誰でも簡単にできます。でも、コンテンツを作るのはプロじゃないとできません。だからこそ、Web制作会社があると思っています。
ぜひ、コンテンツにこそお金をかけてほしいと思います。それ以外のコーディングなど構築の部分はなるべくローコストにできるような施策を考え、コンテンツにしっかりコストを使うことが大事だと思います。
そのために、ぜひ当社にご用命ください!(笑)」
―長時間、大変ありがとうございました。
「こちらこそ、ありがとうございました」
株式会社キノトロープ 代表取締役社長 生田 昌弘
https://www.kinotrope.co.jp/
(プロフィール)
1959年生まれ。岡山県出身。1985年に生田写真事務所を設立し、カメラマンとして活動を開始する。1993年12月にキノトロープを設立し、代表取締役に就任。以後、一貫した方針で数々のWebソリューションを築き上げる。現在もネットエバンジェリストとして布教活動を実践中。
主な著書に『Webブランディング成功の法則55』、『CMS構築成功の法則』)、『Webサイト構築ワークフロー』、『アクセス解析からはじめる Webサイト運用 成功の法則』、『次世代Webサイト構築ワークフロー』など。
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