ここ数年、WebプロダクトやWebサービスでは「グロースハック(Growth Hack)」という手法を使って、短時間でプロダクト品質やサービス内容の向上に成功しています。そして、グロースハックを実行する人の意味として、「グロースハッカー」という言葉も多く使われるようになりました。
さらには「マーケッターの時代は終わりを迎え、これからの時代はグロースハッカーが活躍する」といった意見も聞かれます。これはどういうことでしょうか。
従来は、プロダクトマネージャーが開発フェーズを仕切り、プロダクトが完成した後、マーケッターがマーケティングを仕切りました。しかし誤解を恐れず極論を言えば、従来のマーケティングは派手に宣伝をかけ、結果は祈るだけ。そして次の手を打つにしても、その時期は半年先や1年先になってしまうことも多く、宣伝のための費用も馬鹿になりません。このような仕組みを、グロースハックが変えようとしているのです。
今回は、そんなグロースハックの概要や具体的な取り組みについてわかりやすく解説します。
グロースハックとは何か?
グロースハックを直訳すると「成長をハッキングする」という意味になります。さっぱりわかりませんね。「ハック」「ハッカー」という言葉は、日本ではネガティブな意味で使われますが、アメリカでは「技術力を持って困難なことを成し遂げられる人」のような意味で使われることが多いです。つまりグロースハックとは、「技術で成長を成し遂げる」というのがふさわしいと思います。
そして、プロダクトの改善・改変に積極的に介入(ハッキング)しながら、成長を手助けするのがグロースハッカーで、いわゆるマーケッターに近い仕事を担います。
グロースハックは、収集した各種のデータを元に改善内容を決定し、それを反映させる施策を繰り返し導入します。対象はWebプロダクトなので、改善のための費用もそれほどかかりませんし、改善のサイクルを短くすることができます。つまり、予算がゼロに近くても、マーケティングを繰り返し実施できるのです。
グロースハックの事例
次に、グロースハックによる成功事例をいくつか紹介します。
今では知らない人がいないほど有名なサービスですが、当初は知名度が非常に低かったため、サービスの特徴や使い方などを知ってもらうためのテキスト情報がWebサイトにあふれていました。実際には、そのたくさんのテキスト情報が妨げとなって、登録(サインアップ)まで進まなかったのです。
知名度が低いWebサイトを訪れる人は、友人の紹介なり口コミなどから興味を持った人が大多数です。そこで「テキストによる説明機能は必要ない」との仮説を立て、ログインとサインアップ項目に絞ったシンプルなページデザインに変更しました。それにより、サインアップ率を含め、ユーザー数が劇的に増加したそうです。
ゲームアプリ
あるゲームアプリでは、ダウンロードした後に最初にアプリを立ち上げる際に非常に時間がかかり、続けることが嫌になってしまい、アプリを終了してしまうユーザーが多いという仮説を立てました。
施策として、立ち上げ中にミニゲームを行えるようにし、ミニゲームをやっている間にアプリの起動を完了させるようにしたところ、ユーザーを飽きさせることがなくなり、ユーザー数が増加したのです。
同じような施策として、アプリ立ち上げ中にムービーが流れるようにしたものもあります。
ここでは、非常に分かりやすい例としてUIの変更による成功例を2つ紹介しましたが、実際にはクリックの順番などの繊細な変更からプログラムの変更まで、多岐にわたります。
どのように実践するのか?
グロースハックの概略はすでに紹介しましたが、ここではもう少し掘り下げてみます。
グロースハックは、仕組みの変更によってプロダクトの成長を実現する試みで、広告に頼らず自然にユーザー数(=収益)を増やすことが目的です。
実施した施策の効果が数値としてすぐに反映されるのが、Webプロダクトの特徴のひとつです。ですから、なにを重要な指標として注目していくのかを見極めることと、的確に設定することが重要です。
また、変更したらすぐにフィードバックデータを収集し、効果がなければすぐに次の対策を行います。施策がうまくいっても、さらなる向上を目指して、次の施策を打つことも重要です。グロースハックがうまくいっている会社は、常にグロースハックを実践し続けているのです。
必要なスキルとパーソナリティ
グロースハッカーは技術的なところまで首を突っ込むのだから、エンジニアでなければいけないと感じた人も多いでしょう。しかし、必ずしもエンジニアである必要はありません。プロダクトの持つ問題やマーケティング的なことをしっかり認識した上で、プロダクトの改変を推進できる人ならば、その人の持つ技術はあまり関係ありません。
もちろん、ひらめいた発想や仮説を実証するための仕組みをプロダクトに実装させるためには、基礎的なプログラミング知識やデータ解析能力は必要です。また、Webプロダクトの多くはUIが最も重要な要素の一つとなっているので、UIやユーザー行動の知識も不可欠です。ですが、何よりも必要なのは仮説を立てるための「ひらめき」です。
また、ハッキングを進める過程では、プロダクトに関わる大勢の人と議論し納得してもらう必要があります。そのときに、共通認識を形成しておくと議論を進めやすくなります。グロースハックの共通認識を形成するフレームワークのひとつとしてAARRRがありますが、このようなフレームワークをベースにして議論すれば「ここを改善するために、このように改変する」といったことを短時間で理解してもらえるはずです。
さらに、多少の失敗にはへこたれないメンタリティも必要条件のひとつです。
グロースハックに必要なツール
グロースハックを行うためには、GoogleAnalyticsなどのアクセス解析ツールやSurveyMonkeyなどのアンケートツールを使って、ユーザーがどのような行動をとったのかを示すデータをとり、検証し、施策を立てます。このような分析ツールを使いこなす能力があればベストですが、少なくともツールによってなにがわかって、なにがわからないのかは理解しておく必要があります。
Webページのデザインが複数あったときに、どれが良いのかという答えは簡単に出すことができません。この場合はA/Bテストツールを使ってテストすることが一般的です。A/Bテストとは、AとBのどちらがいいのかをテストすることです。実際にWebページを複数作って公開し、クリック数などのデータを分析することで、サイトの改善に役立てるのです。
おわりに
いかがでしたか?
グロースハックはどのようなものなのか、そしてグロースハッカーに必要なスキルを紹介しました。いまだにグロースハックやグロースハッカーという職種の定義は明確に定まっていませんが、役割や仕事の内容などについてのイメージは伝わったでしょうか。
単に意見を言うだけの従来のマーケッターから、プロダクトチームに入り込んでデータを基にした仮説をプロダクトに反映させることが、Web時代のマーケッターです。
職種としてのグロースハッカーへの壁は非常に高いと感じられたかもしれませんが、そんなこともなさそうです。現在、各種ツールの急速な進歩や開発体制の変化によって、プログラミング知識やデータ解析能力の敷居はどんどん下がっています。仮説を作るという創造的な能力が一番重要視される時代が、すぐにやってくるのではないでしょうか。
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