近年、自然言語処理分野において大きな進歩が見られ、その中でもBERTというモデルが注目を浴びています。
BERTは、Googleによって提案された革新的な技術であり、文脈を理解する能力に優れ、さまざまな自然言語処理(NLP)タスクで高い性能を発揮し、その精度と汎用性の高さから様々な分野で応用されています。
本記事では、そのBERTの仕組みや特徴、Google検索に与える影響などをご紹介します。
目次
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とは、Googleが2018年に開発した自然言語処理モデルであり、Transformerというアーキテクチャを用いて双方向から文章を学習することで、従来のモデルよりも優れた文脈理解能力を実現しています。
この特徴により、検索エンジンのアルゴリズムや翻訳・文書分類・質問応答など、様々な自然言語処理タスクにおいて高い精度を発揮し、2018年当時の最高スコアを記録したことでも大きな話題となりました。
なおBERTは、大量のデータに基づいて事前学習されており、与えられた様々なタスクに対して柔軟に対応できる点が強みです。そのため、近年注目を集めているAI技術の一つであり、今後も様々な分野での応用が期待されています。
わかりやすく言うと、普段私達が会話をする時に使用する「話し言葉」のような複雑な文章でも、意図や文脈を捉えて理解する能力が向上しました。
以下はGoogleが公開しているBERT導入前後の検索結果の比較を当社にて分かりやすく図解にしたものです。
「do estheticians stand a lot at work(日本語訳:エステティシャンは仕事中に立つことが多いか)」という検索結果に対して、BERT導入前は、クエリの中にある「stand(立つ)」を「stand-alone(独立する)」というにマッチさせた検索結果になっています。
BERT導入後は、「stand(立つ)」の意味をクエリの文脈から理解し、エステティシャンの立ち仕事に関する情報にフォーカスした検索結果を返すようになっています。
自然言語処理(NLP)とは、人間が日常的に使用する言葉(自然言語)をコンピューターが処理・分析する技術です。
NLPは、まず文章を単語に分割し、それぞれの単語の意味や役割を分析します。文脈に基づいて単語の意味を推定したり、文法規則に基づいて文章構造を解析したりすることで、人間が書いた文章や話した言葉を理解することができます。
近年では、機械学習や深層学習の発展により、NLPの精度が飛躍的に向上しています。大量のテキストデータを学習することで、より複雑な文章やあいまいな表現も理解できるようになり、翻訳・音声認識・文書分類・質問応答などのタスクで活用されています。
Transformerとは、Googleが2017年に発表した革新的な深層学習(ディープラーニング)モデルであり、自然言語処理(NLP)分野に大きな飛躍をもたらしました。
これまでのCNNやRNNと比較して、大量のデータを扱うことができ、自然言語処理の精度と速度が向上しています。
また、Transformerの主要な要素はエンコーダとデコーダです。エンコーダは入力文を処理し、デコーダは出力文を生成します。このシンプルなアーキテクチャは、非常に汎用性が高く、多くの自然言語処理タスクに適用できることも利点です。
Googleが検索エンジンにBERTを導入した背景として「検索クエリの多様化」が挙げられます。これはスマートフォンの普及により、いつでもどこでも検索できるため、従来のキーワード検索に加えて自然言語を用いた質問や長文の検索が増加しました。
また、音声検索や画像検索などの新しい検索方法も利用できるようになったことから、ユーザーが単にキーワードに一致する情報ではなく、より深い理解や洞察を得られるような情報や検索体験を求めるようになりBERTの導入に踏み切ったと言えます。
また、検索エンジン以外にも、AIアシスタントやスマートスピーカーなど、音声でコンピューターやデバイスを操作するVUI(音声ユーザーインターフェース)の普及もBERTが導入された背景にあります。
音声ユーザーインターフェース(VUI:Voice User Interface)とは、ユーザーが音声を使ってデバイスやコンピューターとやり取りするためのインターフェース(接点)を指します。
BERTがどのように言語学習しているのか、その仕組みについてご紹介します。
BERTは、シーケンスを基に、別のシーケンスを予測する事前学習モデルであり、入力された名前のついていない分散表現をTransformerが処理することによって学習します。
シーケンスとは、単語データの並びで文章全体を指します。
自然言語処理において、言葉は単なる文字列ではなく、意味を持つ「単語」として扱われます。これらの単語を分散表現と呼ばれる高次元のベクトルに置き換えることで、意味を数値化します。
実際には、TransformerはMasked Language ModelとNext Sentence Predictionという2つのアプローチを組み合わせることで、従来のモデルよりも高度な言語理解能力を実現しています。この学習方法は、単語同士の関係性や文脈、文の構造や意味関係をより深く理解することを可能にし、自然言語処理の様々なタスクにおいて卓越した性能を発揮することができます。
Masked Language Model(マスク言語モデル)は、言葉の推測を通して言語理解を深める手法です。この手法は、入力文の一部をマスク(隠す)し、マスクされた単語を推測するタスクを実行することで、単語間の関係性や文脈を効率的に学習します。
従来のモデルは、単語を左から右へと一方向に処理していましたが、BERTは双方向エンコーディングと呼ばれる手法を用いて、文脈を考慮しながら処理します。
例えば、「私は[MASK]が好きです」という文において、「猫」や「犬」といった単語が[MASK]に入る可能性がありますが、文章全体の意味を考慮することで、「猫」が適切な単語だと推測することができます。
Next Sentence Prediction(ネクストセンテンスプレディクション)は、文の繋がりを推測し、文脈理解を深める手法です。この手法は、2つの文のペアを用意し、後ろの文が前の文の後に続くかどうかを判断するタスクを実行することで、文の構造や意味関係を効率的に学習します。
従来の自然言語処理モデルは、単語や文を単独で処理することが多く、文全体の構造や意味関係を理解することが困難でした。一方、Next Sentence Predictionは文をペアで処理することで、文脈を考慮したより深い理解が可能となります。
例えば、「私は猫が好きです。」と「猫はかわいい動物です。」という2つの文が与えられた場合、BERTはこれらの文が連続していることを判断することができます。
Googleが検索エンジンに導入したBERTの特徴、どのようなことができるようになったかをご紹介します。
BERTの最大の特徴は、文脈理解に優れた能力を持っていることです。これは、双方向性エンコーディングを持つTransformerアーキテクチャを使用しているため、単語や文のコンテキストを理解する際に、その前後の単語や文脈を考慮することができます。
BERT以前は、単語のみを予測する一方向モデルや浅い双方向モデルであったため、十分な文脈理解が困難でしたが、BERTの双方向性により、より自然な文脈理解が可能になります。
次に汎用性の高さも特徴として挙げられます。
これまでの特定のタスクに特化したモデルではなく、様々な自然言語処理タスクに適用することが可能になりました。そのため、大量のテキストデータを用いて事前学習を行い、言語に関する基本的な知識を効率的に習得することができます。
また、既存の処理モデルの前に接続(転移学習)させることで、特定のタスクに偏らず、幅広い知識を獲得することが可能になります。
BERTは、少ないラベル付きのデータでも効果的に利用できます。これは、事前学習により、言語の一般的な特徴を学習し、その後の微調整によって特定のタスクに適応させることができるためです。
現状、ラベルが付与されたデータセットは少なく、手に入れることが困難です。またラベルを付与するにも時間と労力が必要ですが、BERTを使用することで、少ないデータで高いパフォーマンスを発揮することが可能になります。
BERTのGoogle検索への導入は、検索エンジンの性能とユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与えることが期待されます。
そこでBERT導入が検索結果にどのような影響を与えるかをご紹介します。
検索エンジンはより文脈を理解し、ユーザーの検索意図に適した結果を提供することができます。これまでの手法では、特定のキーワードのマッチングに頼っていた部分が、BERTによって文脈や意味の理解に切り替わるため、より正確で適切な検索結果が表示され、ユーザーの検索体験が向上します。
検索エンジンは複雑なキーワードや長いフレーズに対して、より適切な結果を提供することが可能になります。これまでの手法では、長いフレーズや専門的な用語に対して正確な検索結果を得ることが難しかった場合がありましたが、BERTの優れた文脈理解能力により、これらのキーワードやフレーズに対する検索結果の品質が向上します。
上記のようにBERTがより適切な検索結果を提供することで、特定のサイトへのトラフィックが増加または減少することが考えられます。
例えば、より関連性の高いコンテンツを提供するサイトは流入数が増加する一方で、不適切なコンテンツを提供するサイトは流入数が減少する可能性があります。
検索エンジンに導入されているBERTを意識して、SEO対策を実施する必要があるでしょうか?結論、BERTを考慮したSEO対策を実施する必要はありません。
なぜなら、BERTはGoogleが多様化する検索クエリに対応できるよう、検索意図の理解や言葉の意味、検索精度を向上のために導入した技術だからです。
したがって、ユーザーの検索意図を満たす、ニーズに応じた良質なコンテンツを提供することがSEO対策につながります。
良質なコンテンツを提供するためには、以下のポイントが重要になります。
最も重要な観点は、ユーザーの検索意図を理解することです。
ユーザーが検索する際のきっかけや解決しようとしている問題や疑問を正確に把握することから質の高いコンテンツ作りは始まります。
次に独自性の高いコンテンツ制作を心がけることです。
独自性のある内容は、他のサイトや情報源では得られない新しい価値や情報を提供できるため、ユーザーの検索体験の満足度を向上させることができます。
また競合との差別化、サイトの信頼性および専門性の向上にもつながります。
そして、誰にでもわかる内容を掲載することです。
ユーザーに有益な情報を届けるためにコンテンツのわかりやすさは重要な要素の一つです。
読みやすい文章やレイアウトなどを工夫することで、ユーザーだけでなく検索エンジンからも認識されやすくなります。
ここまでBERTの仕組みや特徴についてご紹介しましたが、すでにBERTは検索エンジン以外にも身近なサービスで活用されています。
以下、BERTが実際に活用されている事例をご紹介します。
BERTは自然言語理解に優れているため、ユーザーの音声クエリを理解し、その意図や情報を正確に把握することができます。さらに文脈理解能力も長けているので、より自然で正確な音声認識を実現することができます。
従来の音声認識システムは、単語レベルでの認識に留まっていたため、誤認識が発生しやすいという課題がありましたが、BERTの導入により自然で快適な音声検索体験を提供しています。
チャットボットは、ユーザーからの質問や問い合わせに対して自動で回答するプログラムです。BERTの優れた文脈理解を活用することで、より効果的にユーザーとの対話と自然で適切な回答を行うことが可能になります。
従来のシナリオ型チャットボットでは対応できなかった、複雑な質問やニュアンスのある質問にも対応することができ、顧客満足度の向上に貢献しています。
BERTの文脈理解能力を用いて、自然で魅力的な文章を生成できることから文章作成や翻訳ツールでも導入されています。
従来のツールは、単語や文法構造に基づいて処理を行うため、創造性に欠ける文章や不自然な翻訳結果を生み出すことがありましたが、BERTは原文の意味やニュアンスを正確に把握して、人間らしい文章作成や翻訳が実現できます。
BERTは自然言語処理の分野において革新的な技術として注目され、その優れた文脈理解能力や汎用性により、様々な自然言語処理(NLP)タスクや検索エンジン以外のサービスでも高い性能を発揮しています。
今後は、さらなる精度の向上や応用範囲の拡大が期待されます。特に複雑な文脈や言語への理解力の向上、多言語対応の強化が進むにつれて、BERTの有用性がさらに高まると考えます。BERTの進化により、人々の生活を豊かにする新たな技術革新が期待されます。
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